2015年9月4日から8日まで、「メゾン・エ・オブジェ・パリ 9月展(Maison et Objet Paris)」が開催された。「メゾン・エ・オブジェ」は、インテリアや建材、ライフスタイル関連のアイテムを中心にしたトレードショーで、近年では本国のフランスだけでなく、シンガポールやアメリカでも開催され、世界中からバイヤーやデザイナーが訪れる重要なトレードショーとなっている。
展示会場は、ジャンル別に大きく三つのエリアに分けられる。家具や照明、ファブリックなどインテリアアイテムを中心にした「メゾン」。キッチン、フレグランス、ファッションなど生活空間をより豊かにするアイテムを集めた「オブジェ」。そして、ラグジュアリーやデザイン性を重視し、ライフスタイルに対する提案を行う「リュクス デザイン&空間デザイン」。それぞれにブランドやメーカーの出展ブース、デザイナーによるプロダクトやアートの展示、メゾン・エ・オブジェの企画スペースなどが並ぶ。
今年で20年目を迎えたメゾン・エ・オブジェは、徐々にその規模を拡大し、来場者の約35%を建築家やデザイナーといったクリエイター が占めるという。日本からも企業などが出展するほか、日本商環境デザイン協会(JCD)のプレゼンテーションや、照明デザイナー・石井幹子氏の招待ブース展示、昨年はデザイナーオブザイヤーにnendoの佐藤オオキ氏が選出されるなど関わりを深めている。
「建築やインテリアデザインにおいてインスピレーションのソースとなるプロダクトやアート、プロトタイプの出展が多くある。出展者、来場者として日本のデザイナーが訪れることで、そのアイデアとのイノベーションが生まれることを期待している」と話すのは、メゾン・エ・オブジェを主催するSAFIのフレデリック・ブジャール氏。また、イタリアで開催されているミラノ・サローネなど他の見本市との差別化については、「メゾン・エ・オブジェは、人々の暮らしすべてに関連するものが提案される場所。例えばミラノ・サローネが家具を中心とした見本市とするならば、メゾン・エ・オブジェは生活空間全体に対する見本市」と語る。
毎回メゾン・エ・オブジェではメインテーマを設け、そのテーマに沿った企画展やトレンドセッターによる提案スペースが展開する。今回、設定されたテーマは「PRECIOUS(プレシャス)」。尊い、貴重、大切などの意味を持つこの言葉を、今とこれからの世界のトレンドを通して解釈した製品、作品が会場の各所に並んだ。トレンドセッターの一人、ヴァンサン・グレゴワール氏は今回のテーマについて次のように話す。
「近年のインテリア、ライフスタイルにおいて、特に北欧デザインを中心としたシンプルなものや、自然の素朴な素材感を感じるアイテムが多く求められてきたが、消費者たちは次の新しい価値観を求め始めている。今回のテーマであるPRECIOUSは、ギラギラしたものやただ高価なものを指すではなく、繊細さや儚さ、ミニマルな要素を持った新たなラグジュアリーを見つめ直すもの」
グレゴワール氏がディレクションを担当したブックストアでは、ファッション、フード、工芸、デジタルデータ関連などさまざまなジャンルから、現代における“ラグジュアリー”がいかに変化してきたかを示す書籍をセレクトした。また、グレゴワール氏の知人40人に「あなたにとってのPRECIOUSは?」と尋ねて得られた40の答えを展示。「土」や「お金」「空気」のほか、「時間」など概念的な価値をガラスドームの中に表現した。
メゾン・エ・オブジェの企画スペース「インスピレーション」。全体のテーマであるPRECIOUSをもとにセレクトされた「ゴールド」や「鉱石」を用いたアートやオブジェ、素材が展示される。 グレゴワール氏曰く、これらは今のトレンドの一つである「ミネラリティ(鉱石など風合い、素材感)」を示すものだ。
企画展や企業のブースのほかにも、デザイナー個人によるプロダクトの出展やブースなどが展開した。個人出展のデザイナーへのインタビューについてはレポート(2)で紹介する。(つづく)
チームラボによる企画スペース「Floating Flower Garden」では、天井から吊られた無数の花が、足を踏み入れた来場者に道を開けるように上昇していくインスタレーション作品が展示された。
メゾン・エ・オブジェ・パリ
会期:2015年9月4日(金)~8日(火)
場所:パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場(ZAC Paris Nord 293420 Villepinte, France)