THE BAKE STORE

大阪の南部・羽曳野市の元は飲食店だった建物をデリカッセンへ改修する計画である。お店のコンセプトは「家庭の食卓をほんの少し chefがお手伝い 当たり前のように デリカテッセンをライフスタイルに」。そしてクライアントからはカフェでもレストランでもない「store(ストア)」をお題としていただいた。私たちはまずstoreという概念をデザインで表現することを模索した。storeは直訳すると店・貯蔵・備えなどの意味する。その商品やサービスを提供、準備する場所であることを踏まえ、デリカテッセンの食に関するイメージを先行させるのではなく、広義にとらえた“場所づくり”を前提とした。私たちのstoreという場所づくりに対しての回答はとてもシンプルだ。それは様式や時代背景がない、内外の概念もない、偶然そこにデリカテッセンのカウンターがあり、それ以外は意図せず使われ方が変化していく場所である。時にものに溢れ、時に整然とする。少しの小上がりに腰をかけたり、商品が置かれたり、時に子供が寝そべる。おしゃべりしたり、購入したデリを食べたり、読書したり。様々に変化していく場所でサービス(時間と商品)が提供される空間を目指した。仕上げ材にはモルタル、塗装、ステンレスをメインマテリアルとしながら、各部のディテールを変化させることで、当たり前に目にするstoreとは少し異なる見え方を生む大切なマテリアルへと変化する。また、庭を内部に引き込むことで、内部空間としての使われ方や意図を曖昧にし、そこにstoreという場所がただあるだけの状態を表現した。家形の建築に対してスケールアウトした開口を設けたのも、都市型の閉じられた建築のシェルターの印象から解放し、屋根がかかっているだけの場所としたかったためである。その他、色をすべて黒で塗りつぶすことで色による様式の認識を希薄なものとした。オープン後は、お買い物をする場所という感覚よりも沢山の人が各々自由な時間を過ごせるおおらかな場所が実現されている。この場所の在り方によって、日本では馴染みのないデリカテッセンを世に発信していくために必要な「デリカテッセンをライフスタイルに」を表現できたと考えている。(PROCESS5 DESIGN

 

「THE BAKE STORE」
所在地:大阪府羽曳野市伊賀5-1-11
オープン:2020年11月11日
内装設計:PROCESS5 DESIGN 武田憲昭、吉澤生馬、山田裕水、豊川侑大
施工:インターテック
家具(2階):アトリア
植栽計画:ラボニカル
照明計画:大光電機
床面積:313.79㎡
Photo:YFT 山田圭司郎

【内外装仕様データ】
外壁:吹き付け塗装(ジョリパッド/アイカ工業
床:磁器質タイル貼り(マリスト/アベルコ) モルタル金鏝押え+染色(アクアカラー/アシュフォードジャパン
壁:吹き付け塗装(ジョリパッド/アイカ工業
腰壁:吹き付け塗装(ジョリパッド/アイカ工業)+サンドペーパー当て+ウレタン塗装
天井:吹き付け塗装(ジョリパッド/アイカ工業
家具・什器:SUSバイブレーション 特注タイル貼り(エクシィズ) モルタル金ゴテ押さえ+顔料着色(インテグラルカラー/ABC商会


武田憲昭 吉澤生馬 山田裕水 豊川侑大/PROCESS5 DESIGN
2006年、武田憲昭がPROCESS5 DESIGN OFFICEを設立。2009年、吉澤生馬との共同設立によりPROCESS5 DESIGNへと改名。旅館やホテルといった宿泊施設、ブライダル、店舗、オフィス、住宅まで幅広い空間の設計を手掛ける。

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