REPORT

富山ガラス作家協会「ガラスが繋ぐ人、未来」展

13月28日、29日に、六本木・アクシスのギャラリー「シンポジア」で、富山ガラス作家協会による展覧会「ガラスが繋ぐ人、未来」が開催された。会場には、9組のガラス作家による作品を展示。ガラスを糸のように伸ばして集積させたものや、積層させた板ガラスを切削加工したもの、電気炉に流し込み化学反応を利用して独特の表情を生み出したものなど、それぞれの作家の個性が色濃く出た作品が並んだ。

板ガラスとシートを積層させて切削することで独特の表情を生み出した作品。作/小島有香子

板ガラスとシートを積層させて切削することで独特の表情を生み出した作品。作/小島有香子

熱を加え細く伸ばしたガラスを集め、その繊細さと煌めきを切り取ったような作品。作/吉田薫

熱を加え細く伸ばしたガラスを集め、その繊細さと煌めきを切り取ったような作品。作/吉田薫

ガラスの中に色と泡による繊細な文様をガラスにとじ込めた花入。作/安田泰三

ガラスの中に色と泡による繊細な文様をガラスにとじ込めた花入。作/安田泰三

富山ガラス作家協会は、富山県に拠点を置く個人のガラス作家によって構成される団体。現在、20代から60代まで幅広い年代の作家30組が所属し、共同での展覧会や情報交換を行っている。今回、協会として東京で初めての展覧会を開催するに至った経緯を、協会の代表を務める池田充章さんは次のように話す。「富山には、行政のガラス作家に対する支援体制や、日本初のガラス専門の公立教育機関『富山ガラス造形研究所』などがあり、ガラスを地場の産業の一つとして確立すべく力を入れています。実際に、多くのガラス作家が富山に工房を構え、日々、制作に取り組んでいます。今回の展覧会を通して、その技術や、ガラスの魅力を感じてもらいたいですね」。その他、通常は個々の自費で個展を行っている作家たちだが、協会として協力しあうことでその負担を軽くでき、同時に作家同士の刺激も生まれるなど利点も多いという。

富山ガラス作家協会の代表を務める池田充章氏

富山ガラス作家協会の代表を務める池田充章氏

展示会場には、富山を拠点に活動する9組のガラス作家の作品が並んだ

展示会場には、富山を拠点に活動する9組のガラス作家の作品が並んだ

吹きガラス、カット、切断と複数の手法を組み合わせ、パッチワークのような表情を作り出した器。作/佐野猛

吹きガラス、カット、切断と複数の手法を組み合わせ、パッチワークのような表情を作り出した器。作/佐野猛

ガラスを熱して成型するホットワークと、電気炉で変形、素材を融着させるキルンワークという手法を用いた作品。作/岸本耕平

ガラスを熱して成型するホットワークと、電気炉で変形、素材を融着させるキルンワークという手法を用いた作品。作/岸本耕平

また、参加した作家の一人である吉田薫さんは、「普段はコップや皿など、用途が決まったものをつくることが多いのですが、ここではアートピースとしてガラスの魅力的な表情を伝えたいと考えました。作家が作りたいものを制作することで、作家によって使う技法が異なることも見てとれます。また、用途を限定しないことで、見た人が新しい使い方を見出してくれるかも、と期待もしています」と話す。会場には、インテリアデザイナーらも訪れ、独創的なガラスの表情にインスピレーションを刺激されているようだった。

金、赤、黒が有機的な文様を描く器。作/池田充章

金、赤、黒が有機的な文様を描く器。作/池田充章

吹きガラスによって形づくられた、ななこ文様のグラス。作/坂田裕昭

吹きガラスによって形づくられた、ななこ文様のグラス。作/坂田裕昭

ガラスの質感が、迫力と同時に愛らしさも感じさせる愛染明王像。作/小幡祐嗣

ガラスの質感が、迫力と同時に愛らしさも感じさせる愛染明王像。作/小幡祐嗣

ガラスの内側に文様を浮かべ、それらを重ねることでガラス独特の質感、厚みを感じさせる作品。作/岩瀬明子

ガラスの内側に文様を浮かべ、それらを重ねることでガラス独特の質感、厚みを感じさせる作品。作/岩瀬明子

富山ガラス作家協会に所属する作家たち。左から、佐野猛氏、小幡祐嗣氏、小島有香子氏、坂田裕昭氏、池田充章氏、安田泰三氏、吉田薫氏

富山ガラス作家協会に所属する作家たち。左から、佐野猛氏、小幡祐嗣氏、小島有香子氏、坂田裕昭氏、池田充章氏、安田泰三氏、吉田薫氏

今回展示された作品は、会場で販売も行われ、訪れた瞬間に作品に魅入って、すぐに購入を決めた来場者もいたという。「富山のガラスをアピールすることが、ガラス文化の成長を後押ししてくれている地元への、何かしらの形での恩返しになれば良いなとも思っています」と語る池田さん。2015年には北陸新幹線も開通し、より多くの人が富山を訪れる機会が増える。そこで、いかに今とこれからのガラスの魅力を伝えられるかがカギだとも。個人作家達による、能動的な地場産業の発信に今後も注目したい。 〈 BAMBOO , 撮影/青木勝洋〉

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