富山を拠点に活動する個人のガラス作家たちで組織される富山ガラス作家協会が、東京・新丸ビルの飲食フロア「丸の内ハウス」で、展覧会「食と器」展を開催した。3月14日の北陸新幹線開通に合わせ、丸の内ハウスの各飲食店で行われた「富山フェア」とコラボレートした企画展で、富山県の魅力の一端を感じられる空間が展開した。
同協会による東京での展覧会は、2013年から始まり、今回で3回目。会場には、6人の作家によるガラスの器と、料理研究家・小石原宣子氏がコーディネートした、それぞれの器に料理が盛りつけられたビジュアルが空間を彩った。会場構成を手掛けたのは、建築家の小川裕之氏。富山をテーマに描かれたグラフィックを取り込んだ大きな暖簾が会場を緩やかに分節する。
ガラス作家で同協会の共同代表・池田充章氏は次のように話す。「協会には現在30人の作家が参加していますが、それぞれ追求している作風や技法はさまざまです。今回展示に参加した6人の作家がガラスの“器”を作る機会が多かったということもあり、それに料理を組み合わせた見せ方を模索しました。昨年はアートやデザイン関連のショールームなどが入る六本木アクシスギャラリーで展示を行いましたが、今年は飲食業に関わる方々にもたくさん見ていただけるということで、この丸の内ハウスで器を見ていただくことで、新しい展開につながっていくことを期待をしました」。
作家の森康一朗氏は、「吹きガラスによる器や花器をつくる機会が多く、今回は展覧会なので、そこにパッと目にした時のインパクトのあるものを作りたいと考えました。ケーンワークという、色の付いたガラスの棒を、透明のガラスに巻き込みながら色のラインをつけていく手法を用いています」と話す。また、透明のシンプルな器でありながら、形状や端々に独特の形状を持たせた作品を展示した森知恵子氏は、「普段から、日常で使える器に私が作ったというオリジナリティー少しだけ取り入れたものを作りたいと考えていて、皿やコップなど、同じシリーズで用途のバリエーションを用意しました。実際に、器に料理が盛られている写真を見て、料理研究家の方やカメラマンの方など、他者の視点を知ることができ、新たな刺激をいただくことができました」と語る。
細いガラスの線材を積層させる手法が特徴的な吉田薫氏は、「私自身は器をつくる機会があまり多くないため、自分の作品に料理が盛られているの見て、さらにさまざまな状態も見てみたいという思いを強く持ちました。また一方で、料理や飲食業に携わっている方々が、自分の作品に何か創作上のヒントを感じ取ってもらえればと思っています」と話す。
「富山のガラスのことを知ってもらい、ファンを増やしたいという思いで活動していますが、まだその魅力は“原石”の段階だと思っています。これから、より多くの人々に見てもらうことで、それが磨かれ、注目される存在になるよう、情報発信の場を増やしていければと思っています」と話す池田氏によれば、富山のガラスとは、例えば琉球ガラスや江戸切子などのように、見た瞬間に分かるデザイン的な特徴があるものではなく、富山の地で培われてきたさまざまな技法やそのガラス質を含めたガラスの美しさを包括したものだ、とも語る。
そのガラス文化がアートピース的な作品から、実用的な作品まで、分野をいかに横断し展開を見せていくのか、今後の動きにも注目したい。
富山ガラス作家協会「食と器」
会期:2015年2月18日(水)〜3月1日(日)
時間:11:00〜23:00
会場:丸の内ハウス(東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸ビル7階)
詳細:https://test.bamboo-media.jp/archives/5059
コーディネーター:小石原宣子(料理研究家)
会場デザイン:小川裕之(小川都市建築設計事務所)
プロデュース:BAMBOO MEDIA Co.Ltd.
撮影:青木勝洋
富山ガラス作家協会
http://toyama-glassartists.com/
丸の内ハウス
http://www.marunouchi-house.com/
小川都市建築設計事務所
http://www.ogawaoffice.com/