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RICCAは神楽坂に新しく計画されたガールズバーである。
このプロジェクトを進めるうえで二つのテーマを掲げた。ひとつ目は「日本的な美を内包した空間」である。神楽坂は表通りを一本入ると、今も日本的な風情や路地が残る街である。この街を訪れる人はその日本的な雰囲気を期待していたりする。二つ目は客側の男性だけではなく働く側の「女性から見た美しさ」だ。ガールズバーやクラブ、キャバクラといった店は、男性がどう楽しむか、どういう空間だと気持ちが盛り上がるかといった男性目線で作られた店が多いと思う。ここでは逆に、客を持て成す女性キャスト側がどんな空間で働きたいかという視点に着目した。そこで日本的な「美」を内包し、同時に男女がともに「美」を感じられるものとして「花見=FLOWER」をコンセプトとした。花の美しさや艶やかさ、あるいは散り舞う瞬間の強さと儚さにインスピレーションを得て、このバーをデザインした。
バーはラウンジエリアと、個室で構成させている。ともに全体の天井を覆うのは、花をデフォルメして作ったオブジェだ。これは樹脂板にホログラムシートを貼ってレーザーカットしたものである。ホログラムは視線の角度によって色が変化するのでライティングすることにより、リフレクションした光はさまざまな色を放つ。オブジェの回りの壁は、ミラーで構成することによって「花」がどこまでも広がるような仕掛けになっている。ラウンジエリアは、より艶やかで魅惑的な雰囲気にしたかったため、さらに赤い半透明のカラーフィルムを貼っている。これによってホログラムの色差を赤味で少し抑えている。
一方カラオケルームの個室は、よりアクティビティを持たせるためにホログラムの色をそのまま空間にリフレクションさせている。部屋の中央にシャンデリアのように吊り、外側からと内側からライティングしている。外側からの光ではオブジェそのものを乱反射させ、また内側からの光では壁面や天井に花を投影したような表情を映し出している。また、壁面をグロスパネルにすることでオブジェの映り込みを作り、奥行きを持たせている。このバーには「日本的な装飾」は一切ないが、花によって男性にも女性にも「日本的な美」が感じられる空間になったと思う。
RICCA
所在地:東京都新宿区神楽坂5-1 神楽坂テラスB1Fオープン日:2016年4月27日
床面積:75.9㎡
撮影:Nacasa & Partners
- Designer:
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神田亮平 Roito ○プロフィールへ