REPORT

メゾン・エ・オブジェ・パリ 2015 9月展 レポート(2)

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世界各国のインテリア、建材メーカーを中心とした大型の出展と並び、メゾン・エ・オブジェの見どころの一つである小規模ながら力強いデザインを発信するブランドや、デザイナー、アーティスト達など個性溢れる作品の展示。プロダクトのみならず、アートオブジェやサイエンティストによる実験的なインスタレーションなどが数多く見られる。

 

シンガポールをベースに、さまざまなクリエイターとコラボレーションしたデザインプロダクトを 発表している「Industry+」。同ブランドが、展示したテーブルの“脚”「Bipod」は、フランスを拠点に活動する日本人デザイナー・菅原大氏のデザインによるもの。ライフルなどの大型の銃を固定する「銃架」と呼ばれる脚部にインスピレーションを受けて開発された。4つの脚は、銃架と同じくコンパクトに折りたたんで持ち運ぶことができ、展開して天板となる板を乗せればテーブルとなるという提案。シンプルなデザインが世で広く受け入れられる一方で、菅原氏は、「とにかく多くのパーツを用いて、複雑な機構と技術を詰め込んだプロダクトがつくれないかとチャレンジしました」と話す。脚部に用いられたパーツは全部で106個に及び、その機構が見せる美しさが目をひく作品だ。「Bipod」は、今年10月後半から開催されるデザイン展、「AnyTokyo」でも展示される予定。

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複雑かつシャープなデザインのテーブル「Bipod」

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アルミ製の脚部を折りたたんで収納する専用のケースもつくられた

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フランスを拠点に活動するデザイナー、菅原大氏

 

照明ブランド「ARPEL」が展示したのは、LEDを埋め込んだシャープでシンプルな照明プロダクトの数々。代表のデザイナー、François-Xavier Balléry氏は、「LEDを照明の光源としてよりも、新しいテクノロジー、素材の一つとして捉え、その性質を生かした照明プロダクトをデザインしています。新しい光の形を生み出すことを目的としているので、初めはブランド名を『Goodbye Edison』にしようとしましたが、許可がおりなかった」と笑う。

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François-Xavier Balléry氏と新作のスタンドライト。バー状の中央に小さなセンサースイッチが付いただけのシンプルなデザイン

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薄い額縁が発光するような照明「FRAMED」は、壁付けとスタンドのバリエーションがある

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シャープな脚に光源の天板が載ったようなデスクライト「FINE」

 

メーカーやデザインブランドと協働した工業的なプロダクトが並ぶ中、クリエイターによる手仕事が存在感を示す作品も多く見られた。セラミック製のプロダクトを多く発表している、Gilles caffier氏の作品は、自身とアトリエの職人達よるハンドメイドで生み出されるナチュラルかつモダンな味わいが特徴だ。Gilles caffier氏は、「かつては日本でも磁器のことについて学びました。20年以上にわたり、ミニマムとマキシマムをコンセプトに、細かい手仕事を詰め込んだ作品をつくりり続けています。時代によって人々の求めるものは変わりますが、コンセプトの変わらないタイムレスなものを生み出したい」と話す。

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セラミック製の歪な輪で構成された脚にラムレザーを張ったスツール

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焼き物の他、大理石を用いた作品も多く発表している

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手仕事で生み出される独特のテクスチャーが特徴の作品を20年以上にわたりつくり続けている

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最新作のつぼについて説明するGilles caffier氏

 

バイヤー達に向けた製品の展示のほか、クリエイター達による、プロトタイプやアート作品の展示スペースも設けられた。アーティスト、Arthur Gillet氏の作品は、哲学的なコンセプトを込めた独特の表情を持つ花器。エドガー・アラン・ポーの作品の一節をモチーフに、人の持つ虚栄心を映し出そうとしている。セラミック製の花器に、台座に描かれた模様が反射して、ラテン語の虚栄心に関する言葉が浮かび上がり、また花器に差した花が散りその文字を覆い隠すことで、時間の移り変わりによる人の心の変化を表現している。

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自身の作品に顔を寄せるArthur Gillet氏。

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エドガー・アラン・ポーの作品の一節をもとに、七つの花器とオブジェがつくられた

 

時計のような円形のオブジェの中を、色鮮やかなフィルムが回転し、表情を常に変えていく「101.86° color of the day」は、サイエンスの視点を持ち込んだ作品。デザインユニット、JANSEN & VAILLYの二人が着目したのは、クリスタルの研究に使われる偏光フィルター。クリスタルの性質や成分を分析する時に、専用のフィルターを通して角度を変えながら見ることで、目に見える色が変化する作用を作品に取り込んでいる。時計の秒針・短針・長針のような3つの動きをするクリスタルをそれぞれ回転させ、バックライトに照らし出すことで、色鮮やかな色の移り変わりが生まれる。Laura Lynn Jansen氏は、「クリスタルの見せる美しい色の変化が、自然の情景が移り変わっていくかのようなゆったりとした時間の変化を、曖昧に人の心理に訴えかけます。時計のような形にしたのは、時間という概念に精神的に縛られた現代人に向けて、この色の移り変わりによる緩やかな時間や光の変化を体験して欲しかったから」と話す。

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さまざまなパターンの作品が並ぶ

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クリスタルが回転することでフィルムとの光を通す角度が変わり、色も変化していく

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エコロジカルな作品をテーマに活動するThomas Vailly氏(左)と、ヘルスケアや人間心理に関わるデザインを手がけているLaura Lynn Jansen氏。

その他にも、若いクリエイターや学生など、実験的かつ意欲的な作品が多く展開し、メーカーの製品ブースと共に、現在だけでなくこれからのデザインの可能性を示す場として盛り上がりを見せた。〈了〉

 

メゾン・エ・オブジェ・パリ
会期:2015年9月4日(金)~8日(火)
場所:パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場(ZAC Paris Nord 293420 Villepinte, France)

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